

_chuang_kan_files/shapeimage_2_link_0.png)
_chuang_kan_files/shapeimage_2_link_1.png)
_chuang_kan_files/shapeimage_2_link_2.png)
_chuang_kan_files/shapeimage_2_link_3.png)

第35回 「エディターシップ」(日本編集者学会機関誌)創刊
昨年の2月に日本編集者学会なる会が発足した。
会則によると、学会の趣旨は、「本会は、編集者の歴史的、社会的役割等、編集・出版文化に関わる諸問題の学問的研究とともに、出版の現状、将来像に関わる実践的な課題に応えるべく出版界に寄与することを目的とする」とある。文章が長く、実に分かりにくい。こういうのを「悪文」というのだろう。「編集者」の名前が泣く。
会長は大阪芸術大学の長谷川郁夫教授(元小澤書店社長)で、会員には、学者や大手出版社社員、フリーの編集者などの名前がある。
11月に機関誌「エディターシップ」第1号が創刊された。当分は不定期で、発売元はトランスビュー。定価は2,400円(本体)。
「名編集者に聞く」シリーズの第1回に元講談社で「群像」の編集者を長く努めた徳島高義さんが、「私の出会った作家たち」として、吉行淳之介、村上春樹について語っている。2010年の7月に法政大学で行われたセミナーから採録したものだ。
2011年から小さな出版社で働くという人が面白い質問をぶつけている。たぶん大学生と思われる岐阜出身の質問者は、小さい頃、編集者という存在も知らなかったし、講談社とか集英社というのは印刷会社だと思っていた。今もって本がどのようにしてでき上がるのかもわからない。一般の人が編集という仕事の面白さを受け取ることが出来るのだろうか、と不安にかられている。
徳島高義さんは、「読者にとって、編集者がいるとかいないかは、関係ない」と言い切る。
「読者の立場からすれば、物(本=著作物)があって、それが自分にとって必要であるかないかだけを判断すればいい」
つまり、編集者がいるとかいないとか、編集という仕事が面白いとか面白くないとかは関係ないというのである。
よく「編集者黒子論」といわれる。編集者は作者を立てるために存在する「縁の下の力持ち」みたいなものだというのである。たいがいの本には編集者の名前はいくら探しても載っていない。しかし、必ず存在していることには間違いない。
しいて編集者の面白さというか、「役得」と言えるのは、世の中で、「最初の読者」ということくらいしかない。このささやかな「喜び」に浸れるだけで、編集者稼業を続けている人は多い。
編集者の仕事の内容について語るとなると、そう簡単に一筋縄ではいかない。編集者の仕事の内容は、実に多岐に渡っているからだ。徳島さんのような文芸編集者は、きわめて専門的な特殊な編集者だ。編集者になれば、だれでもが村上春樹に会えるというわけではないのだ。
小さな出版社で働くという質問者に対して、徳島さんは、次のように温かい励ましの言葉を贈っている。
<小さな出版社に勤められるということですが、そのことは本当に大切だと思います。大きな出版社というのは、キチンと組織ができていますから、逆にそのなかで流されるということもあるわけです。(略)これはちょっと言い方が難しいのですが、小さなところは恐らく給料が低いと思うんです。しかし自分でそれを覚悟してそこに入るわけでしょう?
だからとにかくやってみて、自分がやりたいというものを見つけて、そこから更に進んでいかれるといいんじゃないかな、と思います。>
会社の規模は違っても、編集の仕事自体は変わらない。これも、編集の仕事の特徴だ。
会社の中で出世しようという上昇志向が強い人には、編集の仕事は向いていないだろう。別の職種を選んだ方がいい。
難しいのは、「自分がやりたいものを見つける」ことだ。30歳を過ぎても、「自分探し」なんていう寝ぼけたことを言う人が多い。今の世の中では、アルバイトやフリーターでも何とか生きて行けて、餓死する心配はないから困る。しかし餓死までに至らなくとも、貧富の格差が拡大するのは世界各国共通の悩みとなりつつある。
編集の仕事に就きたいと思っている若い人は多い。拙著『編集者の食と酒と』(左右社)で、「あらゆるところで編集者不在の現象が見られる」と述べた。
リーマンショック以降、企業は「人減らし」に懸命だ。その結果、編集の仕事も、「分かりにくい」ので、つい「仕分けされる」対象になっているのかもしれない。
10年も前のことだ。ある学生から、「へん集の仕事」に就きたい、と相談を受けた。残念ながら、へんの字が「糸へん」でなく「人べん」だった。編むのではなく偏っていては、はなから「無理な相談」というものである。
2011年12月7日水曜日
連載ネッセイ=NET ESSAY
愚者の説法 賢者のぼやき
