『西洋近代絵画の見方・学び方』
美術鑑賞の勘所や引用を解説
評者:井上章一
ヨーロッパの宗教画がにがてだという人は、すくなくない。歴史画はもうひとつたのしめないという人も、けっこういる。じっさい、それらは聖 書や地中海神話、ローマ史の一場面などをえがいてきた。西洋的な人文学の教養がなければ、その味わいはなかなかわからないものである。
くらべれば、近代的な絵画のほうが、ずっとのみこみやすい。それらには、色合いや陰影、そして構図などというヴィジュアル面から、むきあえる。天使や聖人のいわれを知らなくても、そこそこにはおもしろがれる。
しかし、そのままだと、西洋美術の源流をなす絵画や彫刻が、わからないままでおわってしまう。そこで、17世紀を専門とする著者が、伝統的 な美術を鑑賞するさいの勘所を解説する。引用のありかたへ、目をむけろ。類型化された表情から読みとれることも、たくさんある、等々と。
薔薇はヴィーナス、そして百合はマリアのしるしになっているという。まよいようのないこういった指摘だけでも、ずいぶんありがたい。くわずぎらいの宗教画などへむかう導きの糸に、じゅうぶんなる。目録学成立史も、なるほどと思った。
★★★★